私署証書認証とは

私署証書認脳のアイキャッチ基礎知識

私署証書と認証

 「私署証書」とは、作成者(文書の名義人)の署名、署名押印又は記名押印がある私文書のことです。そして、「私署証書の認証」とは、作成者が署名などをしたこと(署名の真正)を公証人が証明することをいいます。この認証(証明)により、その私文書が作成者の意思により作成されたこと(私文書の成立の真正)が推定されることになります。

 公証人が認証(証明)するのは、私文書の作成者の署名などであって、その文書の内容が間違いないことを証明するのではありません。
 例えば、Aさんが「添付されているのはBさんの卒業証明書の写しに間違いがない」旨を記載して署名した文書を例にすると、公証人が認証するのは、Aさんが署名したことであり、卒業証明書の写しに間違いがないことを証明するのではありません。しかし、外国の公的機関などに提出する場合、下記に述べるとおり、Aさんが署名したことについて公証人の認証(証明)が求められるのがほとんどであり、また、(提出先がどのような証明資料を求めるかによりますが)、多くの場合、公証人の認証を受けて提出すれば証明資料として受け入れられます。

署名などの認証(「署名認証」)とは異なり、公証人は、私署証書の謄本が原本と符合することを認証(証明)すること(「謄本認証」)もできますが、謄本認証は、多くはありません。

公証人の認証を求める必要性

 例えば、不動産登記の申請書など、私文書の成立の真正(作成名義人が作成したこと)の証明資料の提供が求められることがあります。そうした場合、我が国の官公庁や企業などに提出する私文書については、実印を押捺し、印鑑登録証明書を提出することで、足ります。したがって、日本国内では、私文書について、公証人の認証を受ける必要があるケースは、ほとんどないと考えられます。

 しかし、外国の公的機関や企業などに私文書を提出する場合には、我が国の印鑑登録証明書によって私文書の成立の真正を証明することはできず、公証人の認証が求められるのがほとんどです。
 また、日本の戸籍謄本や住民票など、我が国の官公庁が発行した公文書は、我が国の国内では、そのまま証明文書として使えますが、外国では、証明文書として通用しません。我が国の公証人には、公文書を認証する権限はありませんが、Aさんが作成した「添付の文書はBさんの戸籍謄本に間違いがない」旨の私文書に、公証人が認証することで、外国向けにも、真正な文書として提出することができるようになります。
 我が国の公証人が私文書に認証するのは、ほとんど、こうした外国向けの文書についてです。

署名の真正の確認方法

 公証人は、私文書の作成者が署名、署名押印又は記名押印したことを証明しますが、その確認方法としては、公証人の面前で作成者が署名などを行う(面前認証)、作成者が既にされている署名などが自分で行ったものであることを認める(自認認証)、作成者の代理人が既にされている署名などが本人が行ったものであることを認める(代理認証)という3つの方法があります。
 その前提として、公証人は、私文書の作成者の本人確認を、代理認証の場合は、代理人の本人確認と代理権があることの確認を行います。そのため、本人確認資料や、代理認証の場合は、委任状なども、必要になります。

 外国で提出する私文書についても、代理人による認証が可能ですが、代理による認証の効力が認められない国もあります。そうした国で提出する私文書については、面前認証又は自認認証の方法による必要があります。

認証文

 公証人は、認証をするとき、次のような認証文(いろいろなバリエーションがあります)に署名します。そして、認証の対象である私文書とともに公証役場の契印で一体化します。これにより、その私文書は、公証人による認証(作成者が作成したことの証明)が付されたものになります。

 この書類の署名者 銀座太郎 は、本職の面前でこの署名をした。よって、これを認証する。
 令和5年5月5日 本職役場において

公証人 杉山治樹

 公証人の認証文は、上記のとおり、日本語で作成しますが、外国で使用する私文書については、サービスとして、次のような、英語に翻訳した認証文も添付します。

This is to certify that Ginza Taro signed the attached document in my presence.
Dated 5th May 2023

SUGIYAMA Haruki, Notary

リーガリゼーション(Legalization)

 我が国の公証人がした認証は、外国の機関などにとっては、いわばどこの馬の骨ともしれない者によるものであって、真正なものと確認できないので、我が国の公証人が認証した私文書は、一般的に、そのままでは、外国では、真正なものとして受け入れられません。外国の機関などに問題なく受け入れられるためには、日本の公証人による認証(Notarization)を他の機関が証明すること(Legalization)が必要になります。

 具体的には、①(地方)法務局長から、我が国の公証人による認証であることの証明を受け、次に、②外務省で、(地方)法務局長による公印(証明)が間違いないことの証明を受け、さらに、③我が国の外務省による証明であることについて、相手国(私文書を提出する先の国)の駐日大使館(領事館)の証明(領事認証)を受けるという、認証のチェーンが必要です。 

認証のチェーン

アポスティーユ (Apostille)

 上記のとおり、外国で、我が国の公証人の認証を受けた私文書を使用する場合、原則として、法務局・外務省・外国領事という三重の証明手続を受けなければなりませんが、これは煩雑であるため、ハーグ条約(1961年の外国国文書の認証を不要とする条約)により、条約加盟国間で行使される場合、外務省のアポスティーユを受ければ、相手国の領事認証は必要なく、相手国に送ることができることとされています。我が国は、このハーグ条約に加盟していますので、我が国の公証人の認証を受けた私文書は、加盟国で行使する場合は、法務局長の証明と外務省のアポスティーユで足ります。
 このハーグ条約の加盟国については、こちら をご覧ください。

 ハーグ条約に加盟していない国でも、上記の三重の証明手続を簡素化した手続で足りることがあります。例えば、台湾については、我が国の公証人の認証を受けた後、台北駐日経済文化代表処の証明を受ければ足ります。そのほか、詳細については、お問い合わせください。

 中国は、2023年3月、上記のハーグ条約を締結し、同年11月7日から、我が国の公証人の認証を受けた私文書に、アポスティーユを受けることで、中国に送ることができるようになりました。在日中国領事の認証を受ける必要はなくなった(在日中国大使館における大使館における領事認証サービスは停止)ということです。

ワンストップサービス

 外国で、我が国の公証人の認証を受けた私文書を使用する場合、上記のとおり、ハーグ条約加盟国で行使するのであれば、(地方)法務局長の認証、外務省のアポスティーユを受ける必要があり、したがって、本来的には、公証人の認証を受けた後、法務局に出向いて認証を受け、さらに、外務省に出向いてアポスティーユを受けなければなりませんが、東京などの公証役場 - 銀座公証役場も含まれます - では、あらかじめ(地方)法務局長の認証とアポスティーユが付された認証文書を交付する「ワンストップサービス」を行っていますので、法務局・外務省に出向く必要はなく、直ちに外国の相手方に公証人の認証を受けた私文書を提出することができます。
 ハーグ条約に加盟していない国で行使するときも、東京などの公証役場 - 銀座公証役場も含まれます - では、あらかじめ(地方)法務局長の認証と外務省の認証が付された認証文書を交付しますので、法務局・外務省に出向く必要はなく、相手国の駐日大使館(領事館)で認証を受ければ足りることになります。

認証を受けたい方は

 当公証役場で私署証書の認証を依頼される方は、こちら の説明をご覧の上、受付時間(9:30~11:30 , 13:00~16:30)にお越しください。

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