協議離婚するとき、当事者間で、財産分与、子の養育費の負担などについて取り決めることになりますが、その内容を公正証書で作成するのが望ましいことが少なくありません。
公正証書作成の必要性
次のような場合は、公正証書の作成をお勧めします。
- 離婚に伴う金銭の支払いを確実なものにしたいとき
その典型的な場合として、養育費の支払があります。
特に、子供が小さい場合は、養育費の支払は長期間になります。その間、相手方の転職、再婚などの状況の変化も考えられるので、そうした変化があっても養育費を本当に支払ってくれるかどうかに不安を感じる場合もあるでしょう。
このような場合、執行証書を作成しておけば、相手方が支払わないときには直ちに裁判所に強制執行の申立てをすることができます。
養育費を確実に支払ってもらい、経済面から子供の健やかな成長を確保するのは、親の責任ともいえます。 - 当事者間で合意した内容に法的な問題がないかどうかが不安なとき
インターネットなどで離婚協議書のサンプルを入手して、当事者間の合意を書面にされる方もいらっしゃると思います。
ただ、法律専門家の関与なしに当事者だけで作成する離婚協議書には思わぬ穴が開いていることもあります。最悪の場合、離婚協議書は一応作成してみたものの、その中の合意に法的な効力が認められないものがあることも考えられます。
これでは、離婚に関する争いがずっと続くということになりかねず、何のために離婚協議書を作成したのかが分からなくなります。
これに対して、公証人は、公正中立な法律家として、合意内容に法的な問題がないかどうかについてチェックした上、公正証書を作成します。
つまり、公正証書を作成しておけば、合意内容に法的な問題がなく有効であることが専門家によって確認されていますので、安心です。 - 相手方が「その離婚協議書は勝手に作成されたものだ」と偽造の主張をするおそれがあるとき
極端なケースですが、当事者間で離婚協議書を作成していても、相手方が「その離婚協議書は勝手に作成されたものだ」と偽造の主張をすることが考えられます。
このような主張をしかねない相手方に対しても、公正証書を作成しておけば安心です。公正証書が偽造だと争われることは考え難く、公正証書の記載内容が疑われることはほとんどないと考えられるからです。
公正証書に記載される事項
離婚に関する公正証書に記載されるのは、大きく分けると、「当事者の合意内容」と「強制執行認諾文言」の2つです。
合意内容
一般的には、次のような合意内容が記載されます。これらの事項の全部ではなく、その一部だけを公正証書にすることも可能です。
- 夫婦間の金銭関係の清算(財産分与、慰謝料など)
- 子供の養育関係(親権・監護権、養育費、面会交流など)
- その他(住居移転などの通知義務、年金分割、清算条項など)
強制執行認諾文言
支払う側(債務者)が公証人に対して「支払わない場合には強制執行に服する」ということを述べます。
この文言が公正証書に記載されることによって、支払いを求める側(債権者)は、民事裁判なしで強制執行をすることが可能になります。
手数料
公正証書を作成するには、手数料がかかります。一般的な説明は、こちら をご覧ください。
離婚に関する公正証書では、主に、財産分与(慰謝料を含む)、養育費、年金分割の記載について、手数料が必要になります。
以下、手数料額について具体的なイメージをつかんでもらうために、事例とともに手数料の概算額を示します。
- 財産分与2000万円、養育費(5歳と3歳の子、成人まで1人あたり月5万円)、年金分割ありのケース
(手数料額内訳)
財産分与:2万3000円
養育費:2万3000円
年金分割:1万1000円
その他(正謄本代・送達関係費用):数千円程度
合計:6万数千円程度 - 財産分与300万円、養育費(0歳の子、22歳まで月7万円)、年金分割なしのケース
(手数料額内訳)
財産分与:1万1000円
養育費:1万7000円
その他(正謄本代・送達関係費用):数千円程度
合計:3万数千円程度 - 財産分与8000万円、養育費なし(子が社会人として独立)、年金分割あり
(手数料額内訳)
財産分与:4万3000円
年金分割:1万1000円
その他(正謄本代・送達関係費用):数千円程度
合計:6万円程度
必要書類など
まず、公正証書に記載する内容として、当事者間で成立している合意内容についての情報やこれに関する資料を提供してください。
具体的には
- 養育費などの振込口座を指定する場合は、金融機関名、支店名、預金種別、口座番号、口座名義人の情報
- 不動産の財産分与の場合は、その不動産登記簿謄本(登記情報提供サービスより取得したものでも可)及び固定資産評価証明書又は固定資産税納税通知書
- 年金分割の場合は、各当事者の基礎年金番号
などが必要です。
また、当事者情報の提供などが必要ですが、詳しくは、こちら をご覧ください。